by 認定NPO法人 開発教育協会 (DEAR)
成人学習・教育とは
ユネスコ国際成人教育会議について
解説:近藤牧子 こんどう・まきこ
ユネスコ国際成人教育会議
(CONFINTEA)
ユネスコ(UNESCO:国際連合教育科学文化機関)の主導で、第二次世界大戦後の1949年、デンマーク、エルシノアでの第1回以降、12年に一度開催されてきている、成人教育を推進するための会議です。CONFINTEAの略語で知られますが、これはフランス語での頭文字表記です。第3回会議(1972年)は東京開催でした。毎回、各国政府代表と成人教育に関わる市民社会組織が参加しています。
第4回会議以降の成果文書は、教育や成人教育にとって重要な理念や、その理念を実現する具体的行動の枠組みを提示してきています。第4回パリ会議では、「学習権宣言」の採択を通じて、学習は人間の基本的権利であるという、全ての人のための教育(Education For All: EFA)の理念が掲げられました。宣言には、学習権とは「文化的ぜいたく品ではない」「生存の欲求が満たされたあとに行使されるようなものでもない」「単なる経済発展の手段ではない」とし、学習活動は「人々をなりゆきまかせの客体から、自らの歴史をつくる主体にかえていくものである」と明示されました。
第5回ハンブルグ会議で採択された「ハンブルグ宣言」には、持続可能な開発や、人権、ジェンダー平等、グローバルシティズンシップといった教育の価値が示され、その内容は現在のSDG4.7にほぼそのまま反映されています。前回である第6回ベレン会議では、EFAを実現するための「ベレン行動枠組み」が採択され、政策、統治、財政、参加・包摂、質、の五つの評価観点が設けられました。そして特に、現在のSDG4のタイトルにもなった教育の「質」の重点化が図られました。
なお、会議開催間隔の12年が長すぎるとして、第5回会議と第6回会議の中間年には「CONFINTEAⅤ+6」が、第6回会議と第7回会議の中間年には「CONFINTEAⅥ Mid-Term Review:MTR」が開催されています(※)。
※「CONFINTEA Ⅴ+6」には政府代表参加者がなく、市民社会組織(CSOs)のみの参加となったが、「Mid-Term Review」には、各国政府代表も参加し、主催する韓国からは文部科学副大臣の登壇もあった
HISTORY
開催年 | 会議開催地 | 成果文書 |
---|---|---|
1949 | 第1回 エルシノア(デンマーク) | - |
1960 | 第2回 モントリオール(カナダ) | - |
1972 | 第3回 東京(日本) | - |
1985 | 第4回 パリ(フランス) | 「学習権宣言」 |
1997 | 第5回 ハンブルグ(ドイツ) | 「ハンブルグ宣言」 |
2003 | CONFINTEAⅤ+6 タイ(バンコク) | - |
2009 | 第6回 ベレン(ブラジル) | 「ベレン行動枠組み」 |
2017 | CONFINTEA Ⅵ Mid-Term Review 水原(韓国) | 「CONFINTEA Ⅶに向けて:成人学習・教育と2030アジェンダ」 |
2022 | 第7回 マラケシュ(モロッコ)「マラケシュ行動枠組み」(予定) | - |
この12年、どんなことがされたの?
第6回会議からのこの12年間には、「ベレン行動枠組み」の各国進捗状況をはかるため、「成人教育・学習のグローバル・レポート(通称:GRALE)」が第一次から五次にわたって作成発行されてきました。ユネスコから政府に送付されている各国調査書は、国内の多様なステークホルダーと一緒に作成することが推奨されていますが、政府とCSOsとの共有は、ネットワーク基盤による関係性を必要とし、なかなか困難なのが現状です。日本でも連携協力によるモニタリングはうまくいっておらず、第二次レポート(2013年)の日本政府の回答では、「日本の学校教育システムは管理が行き届いており、ほとんど全ての子どもたちが義務教育に通っている。よって、成人の非識字の問題は社会問題と認識されていない」という、現実に反した記述内容の回答が提出されてしまいました(※)。
そうした状況から、第7回会議で発行される最終報告となる第五次レポートに関しては、DEARのALE(成人学習・教育)プロジェクトチームを中心に、日本社会教育学会、基礎教育保障学会、日本公民館学会に関わる社会教育関係者と連携し、文科省回答に対してコメントや提案をした結果、多くの箇所が反映されました。アジア太平洋の成人教育団体のネットワーク組織であるアジア南太平洋基礎・成人教育協会(ASPBAE)の事前会合(2021年9月)では、今回の日本の連携事例はモデルケースとして紹介されました。
6年目の中間総括会議(Mid-Term Review)は、第四次レポートをもとに開催されました。また、2015年にユネスコ総会採択された「成人学習・教育に関する勧告(通称:2015年勧告)」と、SDG4との関係について議論されました。
グローバルレポートの概要
国数 | 特徴と内容 | |
---|---|---|
GRALE 1(2009) 第一次レポート |
154 |
|
GRALE2(2013) 第二次レポート |
141 |
|
GRALE3(2016) 第三次レポート |
139 |
|
GRALE4(2019) 第四次レポート |
159 |
|
GRALE5(2022) 第五次レポート |
未 |
|
(※)日本では1948年以降、公的な識字の実態調査が行われておらず、識字能力の評価指標も定められていない。全国に数多くの公立・自主夜間中学や識字学級、日本語教室の活動があり、義務教育の形式卒業者の問題も顕在化しているが、非識字の状態に加え、機能的非識字状態や、日本語を母語としない人たちの現状の実態は不明である。