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by 認定NPO法人 開発教育協会 (DEAR)

政策提言

【開催報告】CONFINTEAⅦフォローアップミーティング

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【開催報告】CONFINTEAⅦフォローアップミーティング

2022年10月1日(土)に第7回ユネスコ国際成人教育会議(CONFINTEAⅦ)のフォローアップミーティングを開催しました。

フォローアップミーティングでは、CONFINTEAⅦ会議概要およびその成果文書である「マラケシュ行動枠組み」について共有し、今後の方策について議論をしました。そして、文部科学省総合教育政策局生涯学習推進課 課長補佐の中村崇志氏にもご登壇いただき、約70名の参加者を迎えて実施しました。

当日プログラムはこちら

1.全体挨拶

●湯本浩之(DEAR代表理事)
●青柳茂(ユネスコ・アジア太平洋地域教育事務所所長)

2.趣旨説明・会議概要について 

●報告:近藤牧子(DEAR副代表理事、日本社会教育学会常任理事)

CONFINTEAⅦをめぐる背景、調査、論点

「マラケシュ行動枠組み」に反映されたこれまでの重要文書、また、先の成果文書に対する各国による評価報告である、「成人学習・教育のグローバルレポート」(GRALE)とそのテーマの変遷について紹介。そして、「成人学習及び成人教育に関する勧告(2015年勧告)」で提示された三つの重点領域など、CONFINTEAⅦをめぐる背景、調査、論点などについて、説明がありました。

市民社会フォーラムでの様子、CONFINTEAⅦ本会議と分科会

CONFINTEAⅦの前日に行われた市民社会フォーラムでの様子、CONFINTEAⅦ本会議と分科会の会議のハイライトを報告しました。その中で、アクティブ・シティズンシップへの示唆として、「各国、地域で伝統的に存在する民衆教育を意味し、ヨーロッパ的な『シティズンシップ教育』のみを意味していない」こと、それゆえ、「日本も、伝統的な民衆教育の蓄積に、アクィブ・シティズンシップの概念を生成し、実践することが求められる」ことが挙げられました。

2)マラケシュ行動枠組みについて 

報告:三宅隆史(教育協力ネットワーク(JNNE)事務局長、DEAR理事

マラケシュ行動枠組み 概要

CONFINTEAⅦの成果文書であるマラケシュ行動枠組みについて、概要およびその論点を日本への示唆という観点で、①スキル、②識字と周辺化された人々、③財政、④人材 、⑤デジタル化と情報リテラシー、に焦点を当てて報告をしました。

まとめと示唆
1. 識字、職業、シティズンシップの3層のスキルが大切
2. 学びの機会を奪われてきた人びとの識字・基礎教育のセカンドチャンスプログラム(学校教育、社会教育の両者)が必要
3. ALEの予算・人的措置の拡充、ALE指導者の専門性強化、待遇改善
4. デジタル・インクルージョンと情報リテラシーの推進
5. SDGs達成の鍵である(ライフスキル教育を含む)シティズンシップ教育の主流化
6. 上記のための政府、住民組織、NPO/NGO、学術機関、企業の連携の強化

3)日本政府の関わりについて 

報告:中村崇志(文部科学省総合教育政策局生涯学習推進課 課長補佐)

文部科学省のCONFINTEAⅦへのコミットメント

CONFINTEAⅦに向けて実施された地域準備会合への参加、ALEプロジェクトとの勉強会への参加など過年度の文部科学省のコミットや、CONFINTEAⅦに参画した文科省職員の立場からの報告がありました。CONFINTEAⅦ会期中の発言やその背景の共有として、日本は国際的にもESD(Education for Sustainable Development)をリードしており、ESDに関して成果文書での記載を求めたことなどが紹介され、「日本の発信するESDの取組は学校教育が中心であり、社会教育、成人教育の分野でも取組を進めていく必要がある」などの所感が挙げられました。その他、今後については以下が述べられました。

今後の方針に関して

・これからの12年を見据え、文部科学省組織内、および文部科学省外の関係者との横の関係作りが重要。文部科学省の内部においても、生涯学習推進課と地域学習推進課(社会教育施設、社会教育士等の担当課)が「縦割り行政」の問題に陥らないようにする必要があり、こうした横のつながりだけではなく、人事異動に左右されない複数年の取組ができるような時間軸のつながりも重要。
・CONFINTEAⅦの成果も踏まえて、施策化に向けた努力が必要。関係する様々な主体との合意形成を図っていきたい。

4)CONFINTEAⅦのフォローアップとアクションについて

CONFINTEAⅦの動向とマラケシュ行動枠組みを受けて、今後の12年間を見据えた方策を考えていくために、以下の論点を提示しました。

【論点】
①識字調査の必要性と識字の国際協力の拡充
②ALE、社会教育におけるアクティブ・シティズンシップの教育の主流化
③3年後に実施されるであろうGRALEの調査対応について


【論点① 識字調査の必要性と識字の国際協力の拡充
マラケシュ行動枠組みを踏まえたリテラシー調査の役割と意義 
説明:大安 喜一(ユネスコ・アジア文化センター)

国際的なリテラシー調査、およびヨーロッパの識字調査から、識字-非識字とわけるのではなく、低識字とすることや、どのような人が識字に困難を持っているか、学び直しへの抵抗感の課題(文字を使わなくなんとか生きてきたため)、学校に行く=識字と限らないということが挙げられました。一方で日本の調査は1948年に実施されたにとどまり、「非識字が社会問題として認識されていない」ということ、また、1948年調査の再検討の必要性および、調査基準や手法などから、海外との比較ができないことが挙げられました。これらを踏まえて、政策面移管して以下の提案がなされました。

マラケシュ行動枠組みを踏まえた識字調査と政策への示唆
▼国際調査や先進国の実践を参考に、日本の文脈に合った調査へ
・識字者の数や割合と共に、低識字者の状況や背景の調査
・多分野の専門家の参加、偏りのない受験者、識字の多様性の議論
・識字教育・学習組織やリソースに関する調査
▼ 教育機会確保法の推進
・公立夜間中学の拡充
・自主夜間中学、識字教室への支援とネットワーク
▼識字の国内の課題と国際協力との連動
・学校外での学びを認定する制度(イクイバレンシー教育)
・学びの場の多様化(コミュニティ学習センターなどの活用)

【論点② ALE、社会教育におけるアクティブ・シティズンシップの教育の主流化】
説明:近藤牧子

行為主体としての市民参加を促す学習・教育
持続可能な開発のためには変革が求められており、変革に合意するのか、どう合意形成していくのか、そして、行為主体としての市民参加を促す学習・教育が求められます。また、民主的価値をはぐくむ学習や教育、批判的思考などについて、どういったことが可能なのか、考えていく必要があります。

グローバル・シティズンシップ教育 / ESD
海外で活躍するような人材育成の観点以上に、社会の多文化化が進む中で、移民の包摂と共生、つまり身近な生活におけるグローバル・シティズンシップの教育がより重視されなければならないこと(それがひいては海外での経験や開発問題の構造的理解につながる)、そして、それらは人権に基づいたものであるべきで、どのように展開していくべきなのか。また、気候危機は、経済活動、産業構造の転換が求められるが、このあたりの教育がどう展開されうるのか、という論点があります。

【論点③ 3年後に実施されるであろうGRALEの調査対応について】 
説明:近藤牧子

まず成人学習・教育活動への参加率が上がることが重要で、識字、職業、シティズンシップの学習に、誰がどのようなところでどのように参加しているかを把握すること。その方法や、具体的実践領域や学習対象者のカテゴリーが、公民館といった場のカテゴライズで測れるのか、どういった学習内容でカテゴライズすると現状把握できるのかが論点としてあります。


5)グループディスカッション

論点提示を受けて、ブレークアウトに分かれて意見交換を行いました。以下には、グループで話された内容の一部である、全体共有で挙げられたコメントを紹介します。

・文科省が識字について、どのような取り組みをしているのか見えない状況。外国籍の方が、まず日本語の会話から入らないといけないということはあるが、識字に迫っていかないと、生活に不便がある。識字と日本語を一体的にとらえて、総合的に施策を進めていかないといけない。
・シティズンシップを高めるために、どういうスキルが必要か、またスキルを高める一つに討論があるが、その中身が、政治的なものにセンシティブになってしまうなかで、どう育めるのか。
・札幌では、自主夜間と公立の夜間中学が連携しており、協働すると大きな効果が生まれる例だと考える。全国にとっても参考になる。11月には、国勢調査の結果の検討、星友館中学校創立から半年を経た実績や今後についてなどが話し合われる。国勢調査で捉えられない、形式卒業や外国籍の方の問題については識字調査が必要で、国立国語研究所の方と識字調査のモニター調査を行う予定。こういった動きを踏まえて今後の基礎教育の保障のために活動していきたい。
・社会人になると仕事、収入など会社や雇用を中心とした話題になる。厚労省の管轄。文科省の社会教育や生涯学習との兼ね合いをどうするか話がでていた。
・識字調査への公正さが必要や、アイヌの言葉についてはどうだろうか話があった。文科省との対話があってよかった。

6)最後に

このフォローアップミーティングを機会に経験交流の機会をもち、政府への働きかけも続けていきたいと考えています。

そして、今後の方策を考えていくうえでは、まだまだ勉強しなければならないこともあり、生涯学習施策については、人口の大半の大人の皆様が社会を変えていくための学習機会を設けていくための仕組みを考えていく必要があります。

今回のCONFINTEAⅦのような国際会議ではさまざまな国の取り組みを知ることができました。これからどういう仕組みを作りつつ、現場での学びから、苦労が円滑にすすむためにはどうするのか、考えていきたいと思います。

DEARとして、「成人学習・教育」というくくりでの市民主導のネットワーク(交流、提言など)を推進するため、今後も多様な形での場づくりを行ってまいります。

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