by 認定NPO法人 開発教育協会 (DEAR)
第7回ユネスコ国際成人教育会議に参加しました(3/3)

こんにちは、DEARスタッフの伊藤です。
6月15日~17日にかけて、第7回ユネスコ国際成人会議(CONFINTEA7)に参加しました。後編は、CONFINTEA7の会議の様子と共に、会議最終日に市民社会からの提言がどのように「マラケシュ行動枠組」に反映されたのかをご紹介します。
3)三日目(6/17)のハイライト
三日目の分科会「変革を目指す成人学習・教育」にDEARの副代表理事の近藤牧子が登壇しました。また、「マラケシュ行動枠組み」が採択されました。
■分科会:変革を目指す成人学習・教育
ASPBAEによる分科会「包摂、参加、持続性のための変革をめざす成人学習・教育(Transformative ALE for Inclusion, Participation and Sustainability)」に参加しました。ここでは、参加、包括、公正のためのALEに関する経験や教訓を共有する機会が設けられ、近藤副代表理事が登壇し、以下の2つの問いに対して話しました。

①包摂と参加に関する政府への提案について
- 政府の成人教育に関わる2つの部署への働きかけ
- CONFINTEA7への政府の参加の提案
- ナショナルミーティングへの登壇
- 日本政府枠への市民社会の参加
②ALEの財政に関する提案(特にODAに関連して)
- 国内の教育予算について (GDPの4-6%および/または公的支出の15-20%を教育に配分する、公的教育支出の少なくとも4%を成人教育に配分する)
- 社会教育士(※)の専門性についての認識を上げ、財政支援も行う
- ODAの予算の増加の必要性
※「社会教育士」についてはこちらの文科省のサイトをご参照ください。
また、登壇者のネルシー・リザラゾ(CLADE、ナショナル・コーディネーター)からは、「私たちは人々の声-若者や大人の声-に耳を傾け、彼らの多様な文脈、知識、経験、言語、そして願望に耳を傾けなければなりません。」と語られました。
分科会を通じて、アジア太平洋地域、アラブ地域、ラテンアメリカ地域の代表者が集まり、ALEを人権として主張し、より強固で変革的なALE政策、十分で透明な教育資金、ALEへの参加型アプローチが呼びかけられました。
■マラケシュ行動枠組の採択
会議最終日に「マラケシュ行動枠組み―成人学習・教育の変革力を活用する」が、CONFINTEA7で採択されました。
市民社会からは、ICAE と ASPBAEが起草委員会に入り、CSO の立場から、特に以下のコミットメントを強化すること主張し、双方の言葉では「重要な勝利」を収めることができました。
- ALEのための公的資金と資源動員を増やし、既存の予算配分の後退を防ぐとともに、GDPの少なくとも4~6%、および/または公的教育支出全体の少なくとも15~20%を成人教育に割り当てるという国際ベンチマークを漸進的に達成する。
- SDG4の成人識字率目標を達成するための資金ギャップを埋め、多くの先進国が国民総生産(GNP)の0.7%という途上国へのODA目標を達成することを含む政府開発援助(ODA)に関する既存の公約の履行を通じて技能訓練を統合するよう努力すること。
また、マラケシュ行動枠組にはそのほかにもたくさんの重要な成果が見られます。概要は成人学習・教育ナレッジサイトをご参照ください。
市民社会による提言の多くを含むマラケシュ行動枠組みが、CONFINTEA7において140以上の UNESCO 加盟国によって全会一致で採択された意義は大きく、この行動計画は、今後12年間にわたり、世界中の成人学習・教育(ALE)の中心的な政策文書となります。
4)最後に(感想)
3日間、各国各地域から、それぞれの成人学習・教育をどのように進めているか、課題など、目白押しでしたが、総じて、成人学習・教育は権利である、ということの理由と意義を深めることができました。そして、権利と表裏一体なのが、それが社会や社会の一員としての責任でもあるということを改めて感じました。
国内の様子をふりかえり、私たち一人ひとりには、学ぶ「権利」があるという言葉は聞いていても、その重要性が具体的に認識されていないと、危機感を感じています。VUCAと言われる、変化が一層激しい現代において、知り、考え、行動するためのスキルは勝手に身につくものではありません。誰もが気候変動や貧困・格差、ジェンダー、平和などの問題に対して、よりよい解決を望んでいると思います。なんのために大人やユースが学び、コンピテンシーやスキルを身に着けるのかというと、それは、人類共通のそういった課題に取り組むためでもあります。学校で学んだ知識を人生100歳時代でずっと応用するのは厳しいのは明らかで、学校などを卒業した後も、当然の権利として学ぶことが、もっと社会に浸透する必要があると改めて身につまされました。そして、一人ひとりの学びは、その人自身の豊かさだけでなく、社会全体の豊かさにつながるということを確信した4日間でした。(報告:伊藤)

【参照】
本会合の報告は以下の団体のfacebookの投稿を参考にさせていただき、翻訳しました。
ICAE facebook
ASPBAE facebook
EAEA facebook