by 認定NPO法人 開発教育協会 (DEAR)
第7回ユネスコ国際成人教育会議に参加しました(1/3)

ユネスコ国際成人教育会議(CONFINTEA)は、成人の学習・教育に関する政策対話と関連する研究・アドボカシーのためのユネスコ政府間会議で、1949年以来、12~13年ごとに開催されています。今回は、その第7回会議が2022年6月15日~17日にモロッコで開催され、DEAR内の成人学習・教育(ALE)プロジェクトより、小荒井(JNNE事務局次長)、三宅(JNNE事務局長)、近藤(DEAR副代表理事)、中村(DEAR事務局長)、伊藤(DEAR事務局)が参加しました。
CONFINTEA7に先立ち開催されるのが、市民社会フォーラムで、ICAE(成人教育協会)主催で6月14日に実施されました。そこで、今回は、前編では市民社会フォーラムについて、後編では本会合のCONFINTEA7について、全三回に分けてご報告します。
なお、本会議に関する報告会は、10月1日(土)に実施予定です。また、機関誌『開発教育69号』(2022年12月発行)にも詳細を掲載予定です。
1)市民社会フォーラム「なぜなら未来は待ってくれないから」(6月14日開催)
市民社会フォーラムは、対面とオンラインのハイブリッドで開催され、世界各地の市民社会組織(CSO)から約100名、オンラインで約80名が参加しました。フォーラムでは、世界/地域全体における成人学習・教育の最新動向の確認および問題点や優先事項を議論し、CONFINTEA7で採択される「マラケシュ行動枠組み(MFA)」のプロセスや、議論のポイントなどが提示されました。参加者同士のワークショップでは、「マラケシュ行動枠組」への提案をキーワードにし、それを市民社会の提案(マニフェスト)に反映させました。以下にプログラムを紹介します。
主催のICAEは、成人の学習と教育を促進する世界規模のネットワークで、そのメンバーにASPBAEがいて、DEARはASPBAEのメンバーの一員、という位置づけになります。ICAEはユネスコとアソシエイト関係にある組織で、国連経済社会理事会(ECOSOC)への諮問資格を持ち、ユネスコ国際成人教育会議において、世界規模での市民社会の声が反映される仕組みとして機能しています。
ICAEの詳細はこちらよりご覧になれます。

■プログラム
- 開会式
- 全体会
・市民社会とALE:CONFINTEA7への道程の分岐点 - スポットライト・レポート
・CONFINTEA7のためのICAEによるスポットライト・レポートのプレゼンテーション
・課題と優先事項を強調する地域の声 - ALEマニフェスト
・ICAEによるALEマニフェストの紹介:目的、構造、内容 - CONFINTEA7とマラケシュ行動枠組に対する市民社会フォーラムのアドボカシー
・CONFINTEA7の構造紹介
・マラケシュ行動枠組み全体構造の紹介
・具体的なアドボカシー分野の特定 - ワークショップ ワールドカフェ
・MFAのための市民社会提言メッセージ(グループワーク) - CONFINTEA7に向けた市民社会フォーラム宣言
・会場及びオンラインモデレーターからのグループワークに関する報告
・CONFINTEA7のCSO宣言のためのアドボカシーポイントの採択 - 閉会式
・クロージングではなく、私たちが共有する未来へ共に歩むこと
・6月15日~17日の市民社会フォーラムプラスプログラムについてのお知らせ
・ICAE50周年記念事業の立ち上げ
2)市民社会からの提案
■グループワーク
参加者同士のワークショップでは、英仏アラビア語の話者ごとのグループに分かれ、マラケシュ行動枠組に対する提案をキーワード化しました。
その直前のプログラムの「具体的なアドボカシー分野の特定の解説」では、「この段階ではマラケシュ行動枠組の本文の構造などを大きく変更できないが、一言でも入ることで、市民社会にとって大きな意味を持ち、活動推進につながる場合があるので、なんとかねじ込む(伊藤解釈)」という気合の入った語りがASPBAEの事務局長のヘレン・バブさんからあり、それぞれのグループでは、何を市民社会のメッセージとして持ち込むか、何が欠けているかを中心にグループで話し合い、キーワードにする作業をしました。

私のグループでは、DEAR内のALEプロジェクトチームでかねてから議論していた、「ALEのための予算を国家教育予算の4%に」ということ、また「識字に関しては途上国、先進国共に重要であること」、「インクルージョン(包括)の際の具体的な対象である先住民族、障害者、被差別者の記載と、そこでの地域や伝統的な知識の尊重」などの意見を挙げました。
同じグループだった、アイルランド(AONTASアイルランド全国成人教育協会)の参加者からは、さかんに「learner voice学習者の声」が訴えられました。
■アイルランドの学習調査
グループの話の展開の中で共有されたことで衝撃的だったのが、アイルランドでは、年に一度、学習調査(識字調査を含む)がされているとのことで、エビデンスに基づいた政策の必要性を思い知らされました。それでも、「本当に、一番、一番、取り残されている人たちは調査できていない可能性がある」という言及があり、忘れてはならない視点だと感じました。整えられるべき政策がある一方で、一人ひとりの市民の声が聴かれる仕組みの必要性も感じました。
補足として、アイルランドでは「全国継続教育訓練戦略(National Future Education and Training Strategy)」なるものを5か年ごとに出しており、この戦略は、技能の育成、包括性の促進、進路の開拓という3つの重要な柱を軸とした、この分野の5年間のロードマップを定めており、今後数年間に直面する経済・社会的課題に対処することを目的としているそうです。そして、この戦略の実行機関として、SOLASというものがあり、アイルランドの「継続教育・研究・イノベーション・科学省」の一機関として公的資金による調査、戦略立案、実行をしていうそうです。
■市民社会からの提案キーワード
話が少しそれましたが、そんなこんなのグループワークを経て、最終的に市民社会フォーラムとしての、マラケシュ行動枠組への提案としては、以下のようなキーワードにまとめられました。そしてこれらのキーワードは最終的に、市民社会のマニュフェストに反映される形でまとめられました。

3)市民社会マニュフェスト
この市民社会マニュフェストをもって、特にマラケシュ行動枠組み(MFA)策定に関するプロセスへの貢献として、声明を提供していくことになります。
日本語訳はALEナレッジサイトのこちらのページに掲載しましたので、ご参考までに。
そしてこのマニュフェストを踏まえた、最終的な「マラケシュ行動枠組」への提案は以下のようにまとめられました。
- ALE財政に関するコミットメントを各国の事情に合わせ強化する
- 識字率向上政策の実施に向けた取り組みの拡大
- 質の高いALEを確保するための中心的な手段として、ALEの教師及び教育者への支援を強化する
- ALEの政策とプログラムの計画、設計、実施に学習者の声を取り入れること
前編はここまでとし、後編では、翌日より開催された本会合であるCONFINTEA7の様子と市民社会からの提言がどのように「マラケシュ行動枠組」に反映されたのかを中心にお伝えします。(報告:伊藤)